60歳前後は、定年退職を迎え、年金受給が始まる節目として多くの方に注目されています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の2023年調査によると、60歳定年制度を採用する企業の割合は約86%に上り、この時期の資産設計が人生の安定を左右すると言っても過言ではありません。

60代の女性が自宅のダイニングテーブルで退職金と資産管理の書類を確認している様子
60代の女性が自宅のダイニングテーブルで退職金と資産管理の書類を確認している様子

なぜ今、60歳前後のお金管理が注目されているのか

少子高齢化が進む日本では、年金だけで老後を過ごすことが難しい現実があります。内閣府の平成30年老年経済総合調査では、夫婦のみ世帯が20年以上の老後に必要な資金は平均2,000万円弱と推計されています。

退職金を受け取るタイミングで多くの人が「どれくらい必要なのか」「どう分配すべきか」という疑問を抱きます。特に2024年からの確定給付企業における積立運用の透明性強化に伴い、退職金設計への関心が高まっています。社労士が教える60歳前後のお金の管理法、資産3分類と退職金の受け取り方が注目される背景には、こうした制度的変化と個人レベルでの不安が重なっているのです。

資産3分類を表すシンプルインフォグラフィック
資産3分類を表すシンプルインフォグラフィック

資産3分類とは何か(初心者向け解説)

資産3分類は、あなたの持っているお金を3つの用途別に区別するシンプルな手法です。複雑な金融商品を選ぶ前に、まずはこの分類から始めましょう。

第1の分類:生活費用資産

毎月の生活に充てるために確保する資金です。年金収入や資産からの引き落とし分で賄える範囲を想定し、解約手数料がかからず流動性の高い預金や短期債券などで管理します。目安は最低でも6か月分の生活費を確保することが推奨されています。

第2の分類:将来備え用資産

医療費用や介護、住宅の修繕など不測の事態に備える資金です。長期的な視野で運用し、元本確保を優先した商品が適しています。この分類は「使わないことが理想」の資産ですが、いざというときにすぐにアクセスできることも重要です。

第3の分類:趣味・余暇用資産

旅行や趣味、人間関係の構築に充てる資金です。生活費用資産がなくなった後も楽しむための余白であり、精神的な豊かさを支える役割を持ちます。この分類を持たないまま退職を迎える人は、退社後のモチベーション低下を招きやすい傾向があります。

実際に相談を受けた方々の中で、この3分類を意識して資産再編を行った方は、退社後の金銭的不安を大きく軽減できたケースが多く見られました。まずは銀行口座を3つに分け、各分類に対応させたところから始めてみましょう [INTERNAL_LINK_1]。

退職金の受け取り方:一括 vs 年金の選び方

退職金は一括取得か年金受領かの選択が可能です。以下の表で主な違いを比較します。

比較項目一括受取年金受取
一時金の規模全額入手可能分割払いになる
運用リスク自分で管理必要会社側が運用・支払保証
税制優遇退職所得控除あり年金所得控除あり
長生きリスク切り詰めが必要終身保証(生命保険会社依拠)
相続への影響遺産に含まれる原則含まれない

厚生労働省の退職手当の実態調査(2022年)では、退職金のおよそ6割が一括受取、4割が年金受取となっています。しかし年を重ねるにつれ、年金受取を選ぶ人の割合は増加傾向にあります。特に夫の年金支給開始と同時に退職する場合、年金受取を選んだ世帯は20年後の資産残存率が高いという調査結果もあります。

  1. まず自分の年金受給開始年齢と月額を確認する
  2. 退職金額に退職所得控除を適用し、手取り額を計算する
  3. 一括受取の場合、3分類の資産配分を具体的にシミュレーションする
  4. 年金受取の場合は、支払開始年齢と保証期間を確認する
  5. 税務専門家に最終確認を依頼し、決断する

現実的な機会とリスク

適切な資産管理ができている場合、60歳以降も比較的豊かな生活を維持できます。例えば、生活費用資産を2,000万円、将来備え用を3,000万円、趣味・余暇用を1,000万円と分類できた世帯は、平均的な年金収入に加えて約6,000万円の資産基盤を確保できます。

一方でリスクも見逃せません。一括受取をした場合、投資経験が浅いまま高利回り商品に手を出し損失を出すケースが後を絶ちません。また、年金受取を選んでも年金支給開始まで数年待つ必要がある場合は、その間の生活費をどう賄うかが課題となります。必ず信頼できる公的機関の情報も参照してください。年金・退職手当に関する公式ガイド / 研究。生活リズムの変化による消費パターンの変化にも注意が必要です。定年前よりも支出が減る一方、不意の大出費に対する備えが不十分になるケースも見られます。

よくある誤解

「退職金があれば老後は安心」「一括で受け取って預けておけば問題ない」「年金だけあれば十分」といった考えは、必ずしも正しくありません。実際に退職後に金銭トラブルを経験した方の多くが、These 3つの誤解のいずれかに該当していました。

特に「一括受取すればすべて解決」と思い込むことは危険です。退職金は一時的な現金であり、それをどのように資産3分類に振り分けるかがその後の生活を決定づけます。また、年金受取を選べば必ずしも安全というわけではなく、支払会社の財政状況や商品内容によって保証内容が変わります。必ず契約内容をよく読み、不明点は社労士やFPに相談しましょう。

この情報は誰に関連するか

このテーマは、現在45歳以上で定年を目前に控えている方、あるいはすでに退職し資産管理の見直しを必要としている方にとって非常に有益です。とくに中小企業の従業員や自営業者は、厚生年金基金などの退職給付制度が手厚くない場合が多く、自分で資産設計を進める必要があります。

次のステップへ

資産3分類の考え方に沿って、まずは自分の現在の資産状況を書き出してみることから始められます。退職金の受け取り方についても、複数のパターンをシミュレーションし、家族とよく話し合ってから決定することが大切です。早めに準備を進めるほど、60歳以降の選択肢は広がります。

Frequently Asked Questions

退職金は必ず一括で受け取る必要がある?

いいえ。一括受取と年金受取のどちらかを選択できます。年金受取は終身保証があるため、長生きリスクに対して強く、税制面でも有利な場合があります。勤務先の退職給付制度により選択肢が異なるため、まず勤務先に確認してください。

資産3分類はどのような順序で始めればいい?

まず銀行口座を3つ準備し、それぞれ生活費用・将来備え用・趣味・余暇用に振り分けます。最初に確保すべきは生活費用資産で、少なくとも6か月分の生活費を余裕を持って準備しましょう。次に将来備え用として医療・介護などのリスクカバーを検討し、最後に趣味・余暇用の資産を決めます。

60歳を過ぎてからでも資産の見直しは間に合う?

はい。たとえ定年直前でも見直しの余地は十分あります。特に大切なことは、今ある資産を3分類で整理し、無理のない支出計画を立てることです。焦って高利回り商品に手を出すのではなく、信頼できる社労士やFPに相談しながら着実に準備を進めましょう。